猫にあって馬にない、猿にあって虎にないものは?

このタイトルを見て、答えは分かったであろうか?

あるものとしては、獺(かわうそ)、猪(いのしし)、狼などがある。

ないものとしては、犬、象、羊、鹿などがある。

それでは、答えを発表しよう。

答えは・・・

犭(けものへん)

である。

では、犬、象、羊、鹿は獣(けもの)ではなく、獺(かわうそ)、猪(いのしし)、狼は獣ということであろうか?

しかし、犬ともともと狼だったのに区別をしているのは疑問に思うことだろう。

今回は、犭(けものへん)の付く字とそうでない字の違いについて調べていきたい。

犭(けものへん)

犭(けものへん)は辞典において「犬部」に収録されている。

「犬」について調べてみると

なりたち・・・象形。尾を上げてほえているいぬの形をかたどる。

意味・・・・・①いぬ。②つまらない者のたとえ。自分や他人をいやしめていう。

犬という字から犭(けものへん)ができたというのがわかる。

なるほど!犬の仲間や近い生き物に犭(けものへん)をつけたという予測ができる。

確かに象や虎などは大きいし、犬と似ていないように思う。

しかし、それでは、獅(ライオン)や猿などが犬の仲間となると納得しにくい。

次に犭(けものへん)がつく字について調べてみる。

犭がつく動物

犬、犰狳(キュウヨ。胴はうさぎ、口は鳥、目は鳶、尾は蛇に似ている)、尨(ボウ。むくむくと毛の多い犬。)、狂(キョウ「。むやみにかみつく猛犬)、狐、狗(子犬)、狛(おおかみに似たけもの)、狒(アフリカ産の猿の一種)、狉(ヒ。たぬきの子)、狖狖(ユウ。黒色のおながざる)、狡(すばしっこい犬)、狻(サン。獅子)、狽(バイ。伝説上の生き物)、狴犴(ヘイカン。虎に似て力があり、訴訟好き。)、狸、狼、猗(イ。去勢した犬)、猘(セイ。狂犬)、猙(ソウ。一本の角と5本の尾がある豹に似たけもの。)、猫、猲(ケツ。口先の短い犬)、猴(コウ。さる。)、猪、猱(ジュウ。手長猿)、猶(ユウ。猿の一種)、猧(ワ。小さい犬)、猿、獅、猽(メイ。小型の豚)、獒(ゴウ。役に立つ犬)、撝(カイ。けものの名)、獟(ギョウ。狂犬)、獞(トウ。犬の一種)、獬(カイ。牛に似た神獣の名)、獫(ケン。口先の長い犬)、獱(ヒン。かわうそ)、獺。獼(ビ。大猿)、玃(カク。大猿)

漢字が登録されておらずここに載せることができないものもいたが、調べていて驚いたのが、ここに載せたほぼ全てが形声文字ということである。

形声文字とは、小学校でも学習したと思うが、部首が意味を表し、部首でない部分は音を表す字のことである。

なので、名付け方としては、このような流れだったのだろう。

エン(猿)と呼ばれる生き物がいる。

漢字を付けたい。

犭(けもの)に音符となる「袁(エン)」を組み合わせて「猿(エン)」としよう。

 

しかし、これだと犭がつく動物との区別に課題が残る。
ここから①生き物の(種類でカウント) ②空想の生き物 の2つに分類し、より詳しく見ていきたい。

犭のつく生き物

犬、狐、狸、狼、猫、猪、猿、獅、獺

9種類と意外と犭がつく動物がつく生き物は少ない。これらの動物の特徴としては、「毛があること」と「手足が合計4本あること、つまり哺乳類」があげられる。

ここからは考察になるが、犬の大きさを基準にして犭がつくかどうかを判断しているのではないかと考える。

9種類のうち、獅(ライオン)以外は、大きくても犬と同じぐらいの大きさである。(中国原産の大型犬のチャウチャウなどはかなりのサイズ)

しかし、それだとどうして獅(ライオン)は犬よりも明らかに大きいのに犭がついたのであろうか?

それは、中国人がライオンの実物を見たことがなかったからである。

調べてみるとライオンは、アフリカとインドの地域に生息しており、古代の中国においては見られなかった。

そのため、当時においては話でしか聞かない空想上の生き物の一種のためだったからではないか?

それでは、次に②空想の生き物について紹介していく。

空想の生き物

犰狳(キュウヨ。胴はうさぎ、口は鳥、目は鳶、尾は蛇に似ている)、狛(おおかみに似たけもの)、狽(バイ。伝説上の生き物)、狴犴(ヘイカン。虎に似て力があり、訴訟好き。)、猙(ソウ。一本の角と5本の尾がある豹に似たけもの。)、撝(カイ。けものの名)、獬(カイ。牛に似た神獣の名)

ここでは7種の空想の生き物がいる。実際にはここに獅(ライオン)を入れてもよいのかもしれない。

空想の生き物については、「虎に似た力」や「牛に似た」というワードが入っているにも関わらず犭がついている。

つまり、犭がつく動物としては「一、犬と同程度かより小さい動物であること」「二、実際に見たことがある動物であること」が条件になっているのだろう。

話は脱線するが、こういった空想上の生き物について聞くと、未だにワクワクしてしまう。胸の中の少年の心はまだ灯り続けているのだなと実感する。

それでは犭がつかない動物についてはどうなのであろうか?これについても調べていきたい。

犭がつかない動物

今回は漢字一文字で表すものについて取り上げていきたい。

馬、虎、牛、熊、羊、魚、虫、豹、貉、鼠、犀、鳥、象、貝、鹿、亀、鰐、鯱、兎

などがあるだろう。

ここから、私が犭がつく動物として挙げた「毛があること」と「手足が合計4本あること、つまり哺乳類」「犬と同程度かより小さい動物であること」「二、実際に見たことがある動物であること」を除くと、残るのは、

鼠・兎・貉

のみとなった。この3つの漢字について調べれば、犭がつくかどうかがより明確に理解できるかもしれない。

なりたち・・・象形。歯をもったねずみの形にかたどり、「ねずみ」の意を表す。

意味・・・・・①ねずみ。つまらない者のたとえ。小人。②うれえる。

ちなみに鼠は部首にもなっており、鼢・鼴(両方ともモグラの意)、鼬(イタチ)、鼫(ムササビ)などがある。

ここから、見るに、小さい生き物の基準として「鼠」が使われているのではないか。鼠は「毛があり、四足動物」として最小単位として機能している。

なりたち・・・象形。長い耳と短い尾をもつうさぎの形にかたどる。

意味・・・・・①うさぎ ②月の異称。月の中にうさぎが住む、という伝説に基づく。

兎はなぜ犭がつかないのか。「毛がある」「四足動物」「犬より小さく鼠より大きい」という犭がつく条件を満たしているのにもかかわらず。

私は理由として二点あるのではないかと考える。一つ目の理由としては、兎がほかの動物にはない身体的な特徴を持っているからである。兎は耳が長く、尾が短いという特徴がある。今回の記事の中で出てきた動物の中で最も耳が長い動物である。そういった特徴を備えているために犭がつかないのではないか。

二点目としては、兎が中国で特別な動物として扱われているからである。兎は繁殖力が旺盛で、1か月足らずでたくさんの子供を産む姿から、子孫繁栄の象徴としての役割があった。

また、また、古代の中国にとって月の満ち欠けは約1か月で一度死んでまた生き返るという神秘的な存在であった。生命力としての象徴の兎と、神秘的な存在の月、両者はもつ共通点から戦国時代(紀元前5世紀ごろ)には、月と兎が結び付けて語られていたようである。

以上の二点から兎は犭がつかないのだと推測する。

貉とは「同じ穴の貉(ムジナ)」でお馴染みであろう。アナグマやタヌキなどをさす言葉して用いられる。

貉は豸(むじなへん)であり、獣が身をふせ、えものをねらっているさまにかたどっている。

豸の漢字には、

豻(カン。のいぬ)、豺(サイ。やまいぬ)、豹、貂(チョウ、テンのこと)、𧲸(テン)、貉(テン)、貆(カン。むじなの子)、貅(キュウ。猛獣の名、飼いならして戦争に用いたという。)、貊(ハク。熊に似て、ロバぐらいの大きさの獣。)、貒(タン。あまぐま)、貙(チュ。虎に似て犬ぐらいの大きさの獣。飼いならして戦争に用いたという。)、貛(カン。あなぐま)、鎞(ヒ。ひょうや虎の類。飼いならして戦争に用いたという。)

豸の漢字の特徴としては、①ムジナ系統の生き物(タヌキやアナグマの類) ②動きの素早い猛獣の類 の二種類があげられる。

まとめ

犭がつく動物の条件についてまとめてみる。

①「犬と同程度かより小さい動物であること」

②例外として、「毛があり、四足動物」として最小単位の鼠。中国で特別な動物として扱われている兎。ムジナ系統の生き物(タヌキやアナグマの類)や動きの素早い猛獣の類の豸の動物。

以上の条件を満たした場合に犭がついているのではないかと考察する。

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