出恭
この言葉の意味を知っているだろうか?コトバンクによると
厠に行くこと
とある。なるほど、トイレに行くことを出恭というのか疑問に残る。
さらに調べていくと、もとは中国語であり、Weblio日中中日辞典によると、
出恭 chū//gōng(チュゥ ゴン)
動詞 ((婉曲語)) 排便する.
とある。
なるほど、婉曲表現としてトイレに行くことを意味しているようである。
日本で「お花を摘みに」に「お手洗いに」などと同様である。
しかし、どうして「恭」という字が大便をさすようになったのかは解決していない。
今回の記事では、出恭の成り立ちについて調べていきたい。
恭について
『角川 新字源 改定新版』によると
なりたち・・・形成。心と、音符共とからなる。
意味・・・・・①うやうやしい。うやうやしくする。②つつしむ。つつしみがぶかい。③へりくだって従う。
うーん、3つの意味どれをとっても大便を表すようには思えない。
ちなみに「恭」という字の部首は「心」であり、「したごころ」というらしい。何か嫌な響きであり、「したごころ」を持つ字としては「慕う」がある。
そうやって見ると、「慕う」のは「したごころ」があるからなのかと余計なことを考えてしまう。
(※部首の「したごころ」にそういった意味は含まれていません。)
話が脱線したが、「恭」ではなく、「出」に実は大便の意味があるのかもしれないので、「出」について調べていきたい。
出について
また、『角川 新字源 改定新版』で「出」を調べると見当たらない。
部首で山のところを見ても載っていないのである。
仕方がないので総画で調べるとあった!!
思いもよらないところに!!
「出」の部首は「凵」(かんがまえ)であり、容器の形やくぼんでいる様子を表しているようである。
なるほど、山が二つ重なった字ではなかったのである。小学校1年生で習ってから今までずっと間違えていたのか・・・!!
クイズとして出したらみんな引っかかることだろう。
「出」について見てみると…
なりたち・・・象形。足が囲いを出るさまにかたどり、「でる」「だす」意を表す。
意味・・・・・①でる。②だす。③支出。④おい。めい。⑤他家にとつぐ。
これを見ても大便という意味は出てこない。
今のところ、「出恭」を自分なりに解釈すると、
「つつしんで(便を)出すことから隠語として出恭となったのではないか」
と考える。
しかし、それでは納得いかない。中国語で調べてみると、答えにたどり着く手がかりが見つかった!!
その手掛かりとは…
入敬出恭について
入敬出恭
これは中国の四字熟語であり、「百度百科」によると、
「出るときには恭しく、入るときには礼儀正しく」という意味であり、中国の超難関試験である科挙にルーツがあるようだ。
科挙とは中国で行われていた官吏(役人)登用試験のことで、日本人だと百人一首にも「天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に 出でし月かも」で選出されている安倍仲麿や、中島敦の『山月記』の主人公であり、虎となった李徴が受けた試験として有名だ!
試験内容はとても難しく、何十年も受けるような人もいたのである。それでも合格すれば一代にて莫大な財産や地位を手に入れることができたのだから、命がけである。
それは言葉だけ実際に命がけで、不正がばれると一族郎党〇刑になってしまうのに、それでもカンニングをするものがいたのである。(身内はどういう心持だったのだろうか…)
そんな試験なのでトイレに行くのは原則禁止で受験生たちは尿瓶を持参していたようである。(ウィキペディア情報)
しかし、大便となるとそうもいかない。大便に行く際には、「入敬出恭」の札をもち、トイレに行くことが許されたようだ。
なるほど!!
読めてきたぞ!!
つまり、小便については各自が尿瓶を持参していたのでトイレに行く必要がない。
しかし、大便だと異なる。「入敬出恭」の札をもらって試験会場から出なけれなならない。
「出恭」=「小便でなく大便をすること」
という風につながったと推測される。
まとめ
「出恭」=「大便をすること」
最初は、「恭」か「出」のどちらかに注目すればわかると思っていたが、人生はそう甘くないのである。
この問題はミッシングリンクを見つけることが大事だったのである。
「科挙の試験ではトイレに行く際に[入敬出恭]の札が必要」
↓
「尿瓶を持参しているので小便はトイレに行かない」
↓
「[入敬出恭]の札が必要なときは大便の時のみ」
↓
「出恭」=「大便をすること」
という図式であったのである。
これからはトイレに行く際に
「出恭してくるわ」
と言ってみよう。
「シュッ…キョウ?何それ?」
と言われること間違いなしだろう。
そしたらここで学んだ知識を存分に披露しよう。
感心されるのではなく寒心すること間違いなしである。
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